LCCの歴史をおさらいしてから、ウェブサイトでチケットを購入する
2ページ目

公開日 : 2023年01月24日
最終更新 :

LCCはどうして安いのか?

©iStock
©iStock

LCCの料金が低価格であることに対して、不安を覚える人もいるでしょう。しかし、それには理由があります。LCCは以下のような方針で航空運賃を安く抑えています。

1. 使用機種を統一する

レガシーキャリアがさまざまな種類の航空機を使用しているのに対して、LCCでは、1種類に統一することが多いです。航空機の免許は機種ごとに必要なので、機種を統一すれば、パイロットの教育にかける費用も抑えることができます。メンテナンスを行う整備士も同様です。また、部品等の在庫も1機種に統一でき、そのコストも抑えることができます。

2. 座席数を多くする

同じ機種であっても、座席数を増やせば、一度のフライトでより多くの乗客を運ぶことができます。つまり、そのぶん、ひとりあたりのコストを下げることができます。(当時ライアンエアーで話題になりましたが、立ち席議論はヨーロッパではいまだに議論があるようです。実現する日はくるのでしょうか? 国と国との距離の近いヨーロッパだからこそ出てくる議論かもしれませんね)

3. 機内設備を簡素にする

同じ機種であっても、それを運航するエアラインによって機内設備は大きく異なります。LCCキャリアは座席数を多くするとともに、各シートのグレードを下げたり、座席モニターやエンタメ機器を導入しないで、初期投資やメンテナンス費を抑えています。

4. 無料サービスの廃止・縮小

レガシー・キャリアでサーブされる機内食。これには多くのコストがかかっています。食事自体の原価はもちろん、短時間に乗客全員に食事を配膳しなければならないので、多くの客室乗務員を搭乗させなければなりません。
機内食を有料にすれば、食事の原価が回収できるとともに、食事をする乗客の数が限定されるため、客室乗務員の人数を減らすこともできます。

また、毛布や枕の貸し出しを有料にすれば、利用者が限られるため、事前に準備する個数を抑えることができますし、備品の寿命も長くなり、結果としてかなりのコストダウンが可能になります。
さらに、チェックイン時に預ける受託手荷物についても、たいてい、レガシー・キャリアよりも厳しい条件を設けて課金することで、規定の重さ以上の荷物に課金すれば、それが収入になります。また、乗客自体が持参する荷物を多少でも少なく抑えようとするため、燃料費の節約にもつながるのです。

5. 駐機時間の短縮

航空機は、ある空港まで乗客を運ぶと、復路で乗客を乗せて帰ってくるのが普通です。しかし帰りの便が出発するまでのあいだ、空港に長時間留まれば、その分乗客を運べないことになってしまいます。つまり、1機の飛行機の運用効率を高めるほど、航空会社にとっては利益が高まることになるので、駐機時間を抑えるために、到着後に短時間で復路の離陸をすればいいということになります。

LCCの運航スケジュールを見ると、到着から次の離陸までの時間がレガシー・キャリアよりも短く設定されているのがわかります。これは、遅延が生じなければ問題はないのですが、たとえば早朝便が遅れると、それ以降の便すべてがドミノ式に遅れる、といったケースも起こりえます。LCCのフライト時間に遅延が生じやすいのは、主にこうした理由のためと言えるでしょう。

6. 人気の空港を避ける

都心に近い便利な空港は、少し離れた地点にある第二空港に比べると空港着陸料が高く設定されています。そのため、LCCは利便性を犠牲にして、第二空港を利用することがあります。

たとえば日本の場合、成田空港や羽田空港の代わりに茨城空港を利用するなどすれば、着陸料が節約でき、この差額がフライト料金に反映されます。

7. 採算の合う路線だけ

レガシー・キャリアは、自社運航ネットワーク拡充のため、大きな黒字が見込めない路線を運航している場合があります。採算性の高くない路線を抱えたエアラインは、ほかの路線の価格を上げなければトータルで黒字にならないため、単純に「人気路線を安くする」という方法がとりにくいのです。
LCCの場合そのような縛りはないので、いつも満席になるような人気路線だけ運航すればよく、フライトを安くすることが可能になります。

各LCCがレガシー・キャリアに比べて低価格設定ができるのは、このようなコストカットを積み重ねた努力のたまものでもあります。

LCCの安全性は大丈夫?

©iStock
©iStock

数年前までは短い区間で「数千円」、ときには航空券だけなら「数百円」というフライト料金もあったLCC。安いとなると、いちばん心配になるのが「本当に安全なのか」という問題。運賃が安いLCCはそれだけ事故率が高いのか? LCCの安全性について確認しておきましょう。

安全基準はレガシー・キャリアと同じ

LCCが安いのは、上でも解説したような合理的な理由がありますが、LCCキャリアにも国ごとの厳しい安全基準が設けられており、安全面ではレガシー・キャリアとの違いはほとんどありません。

オーストラリアの航空格付けを行っているAirlineRatingsのSafety Ratingでは、サウスウエスト航空(アメリカ)、ライアンエア(アイルランド)、イージージェット(イギリス)など多くのLCCキャリアが最高レートの7を獲得しています。

同じAirlineRatingsでは2023年の安全な航空会社TOP20をレガシー・キャリアLCCキャリア別にレポートしていますが、そもそも近年の事故件数は減少傾向にあり、事故件数の内訳でもLCCとレガシー・キャリアに著しい偏りがある、という内容は見当たりません。なぜ、レポートを分けているかは大人の事情があるとして、安全面でLCCを選ばないということは現時点ではしなくてもよさそうです。

付け加えると、欧米以外の地域では、国によって安全基準に多少の違いがあったりしますが、たとえばスクート(シンガポール)は、シンガポール航空が親会社ですし、スペインのvuelingもイベリア航空やブリティッシュエアウェイズを擁するIAGグループです。多くのLCCはその国のレガシー・キャリアとアライアンスを組んでおり、利用者に合わせたサービスを展開しています。門外漢が運営しているケースはほぼないでしょう。

危険な航空会社は淘汰されていく

安さを売りにしていても、他社に比べて事故率が高ければその航空会社から客は離れていき、自然に淘汰されていきます。たとえば、アメリカのLCCとして人気のあったエア・フロリダは、80名弱もの乗客・乗員が死亡する航空機事故を起こしたため、事故の2年後に倒産しました。また、インドネシアのアダム航空は、2007年に墜落事故を起こし、運航停止となった末に倒産しました。

淘汰される前にその会社を利用してしまったらどうしようもないので、我々乗客にとってはなんのなぐさめにもなりませんが、これらの大きな事故を起こしたエアラインは、元々小さな事故を頻発して問題になっていました。「長年小さな事故もなく安全に運航していたのに、いきなり大きな事故を起こした」というケースはめったにないと言えるでしょう。

ですので、もしあまり名前を聞いたことがない航空会社が不安という方は、事前にネットで情報を探し、事故率のランキングなどを参考にするとよいでしょう。(上のAirlineRatingsのページでは航空会社別のサマリーも簡単に見られます。過去5年の事故の有無などでレートが変動するので、意外と多くの航空会社が安全とされていることがわかります)

筆者

上原 康仁

登山関連情報の発信が多いです。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。